生の劇を観ること
私がらくりん座に入団してすぐの頃、劇団の先輩とこんな話をしたことがありました。
私「小学校4年生くらいのころ、らくりん座の「おこんじょうるり」をホールで見たんです。すごく感動しました。最初のお三味線がすごい迫力で。圧巻でした。あの頃はすごくお三味線を弾く人数が多かったですよね。」
先輩「……ん?当時より、今の方が弾いている人数多いよ」
私「え、でも10人くらいいませんでしたか?」
先輩「いないいない!そんなにいたことないよ」
私「だって、花道の方まで並んで弾いてましたよね?」
先輩「…いや、花道の方まで並んだことなんてないよ」
私「………??」
私はとても驚きました。
小学4年生の私は「おこんじょうるり」の舞台を見て、その迫力・エネルギーからどんどん想像を広げていったのでしょう。
今思い出しても、私は三味線を弾く黒子に四方を囲まれて「おこんじょうるり」のテーマを聞いていたようにさえ感じるのです。
私のいた空間すべてがホールの客席ではなく「おこんじょうるり」の世界になっていました。
家に帰る車で母と、沢山話をしたことも覚えています。
私は感動で心が溢れて、とにかく「すごかったすごかった」「悲しかったね」「でも悲しくないよね」と自分の感情を言葉にしていたように記憶しています。
母はそれを「そうね、そうね」と聞いてくれていました。
小学4年生の私が経験したあの感覚は、きっと生の舞台でしか感じられないものです。
演じる側、観る側が空間を共有し、演者の気迫、息遣いが伝わる。そして、音と光に包まれる。
子どもの想像力は無限です。
そして、そのとき子どもが感じたこと、声に出しても出さなくても、それを近くにいる人が共有することで、その経験がより深いものになると思います。
生の劇を、小さいうちに、たくさん観て欲しいです。
それを家族で楽しんで欲しいです。
2月26日、那須野が原ハーモニーホール「あらしのよるに」公演。
ご来場お待ちしております。